VICTOR QL-Y44F スマートで美しいプレーヤー
このプレイヤーは1986年ごろに発売された、中堅クラスのプレイヤー。
当時は既にCDが普及しつつあった頃で、安売りされているのを見たことがある。
まさか30年以上たって手に入れることになるとは思わなかった。
この時期のビクターの「木部」の仕上げは抜群だ。
デザインは多少垢抜けない部分もあるが丁寧に仕上げられている。
先入観なしに見れば、所有しているプレイヤー(8台...)の中でも一番「高そう」に見えるかもしれない。
所有している中ではTechnics SL-10以外では唯一の「オートマチック」のプレーヤー。
やはりオートプレーヤーは便利だ、特にこの機種はアームの横方向の移動に「リニアモーター」の技術を使っているので、横方向には音もなくスムーズに動く(縦方向はベルト駆動なので、モーター音がする)ので、とても高級感がある。
以前所有していたSL-1300シリーズは完全な機械式なので「ギー、ガッチャン」と大きな音がする、あの音も機械らしくて嫌いではないがスマートさには欠ける。
その他にも、SONYのPS-X75「バイオトレーサー」は縦方向も横方向も音もなく動き、針圧調整も電気式のボリュームでするという凝った造りで、とても気に入っていたのだが制御ICが壊れてしまい、修理不能で手放してしまった。
このQL-Y44Fは10年ほど前にオークションで手に入れて、あまり使わずにしまい込んでいたものを最近になって引っ張り出して使っていたのだが、モーターの調子が悪くなってしまった。
スタートボタンを押してもモーターが回らないことがあった、手で「チョン」と手助けしてやると回りだすのだが、回転が不安定で明らかに「ワウ」が感じられたので、ネットで探した沖縄の修理業者に診てもらったところモーターコイルの一部が断線しているとのこと。
ネットで検索すると、この機種のモーターはプリント基板に「コイル」を張り付ける構造で、同じように断線している例があるようだ。
手放すことも考えたがPS-X75を手放した後だったので、部品取り用にオークションでモーターに問題なさそうなものを購入したものを送って修理してもらった。
結局、発売当時の定価より高い買い物になったので大事に使おうと思う。
音の方は「スッキリ」した音がする、それ以上のことは言えない。
やはり、他の「高価な」プレイヤーに比べると「何か」が足りないような気がする。
「良い・悪い」ではなく、「何か足りない」気がする。
オーディオ機器の中でも特に「プレイヤー」は「楽器」としての要素があるのではないかと思う。
QL-Y44Fのキャビネットの作りは、高級な羊羹の「箱」のような構造だ。
所有している、DENONのDK-300は積層したラワンの合板をくりぬいたものだし、LuxmanのPD-441は鉄とアルミのサンドイッチ構造でアームベースは亜鉛のダイキャストでできている。
この構造の違いがどのように「音」に影響するのかは分からないが、色々と試して「良い」と思うからそうしているのではないかと思う。
機械的な特性がどうくではなく、楽器と同じように「聴いた感じ」の結果なのだろう。
たとえば、バイオリンは同じ構造・素材にもかかわらず、天と地ほどの価格差がある。
コスト優先で「とりあえず形にした」ものと、コストを考えずに「いろいろと試行錯誤の結果」の差が「音」になっているのではないか。
しかし、その差は「音」に神経を集中して聞き分けることのできるもので、「音楽」を楽しむためには問題ない差でしかない。
レコードをターンテーブルに「ポン」と乗せて、ボタンを押すだけで「音楽」が始まる手軽さは「音」の差をはるかに上回る。
他のプレーヤーが入れ替わることがあっても、この「美しい」プレーヤーを手放すことはないと思う。