TRIO KA-9300 市販初のDCアンプ
このアンプは私がオーディオに興味を持ち始めた中学生の頃に大人気だった、KA-7300の上位機種。
「音」より「機械」に興味津々の中学生にとって「左右独立電源」という、何やら見た目もインパクトのある特徴を前面に打ち出したカタログを眺めて、脳内で「音」を想像して楽しんでいた。
そのせいか「アンプ」と言えば、中央にボリュームのあるこのデザインを思い浮かべてしまう。
このアンプはTRIOがメジャーになるきっかけになった人気機種のKA-7300の上位機種で、市販の機種で初めてメインアンプ部分がDC化されたアンプ。
KA-7300と同じく電源は左右独立だが、より高級なトロイダルトランスが2個使われている。
当時のカタログでも「音の定位」を強調していたのを思い出す。
実際に聞いてみると
確かにスピーカーの間にそれぞれの音源がきちんと並んでいるが、音に迫力や温かみは感じない。
音が引き締まっていて、「余分」な音が出ない。
真空管アンプなどとは真逆な感じで、音に「色気」が感じられない。
写真で言えば、隅々までピシッとピントが合い「ボケ味」は皆無。
オーケストラの楽器一つ一つを「聞き分ける」ことはできるが「ハーモニー」は感じられない気がする。
音の輪郭がくっきりしている、いわゆる「モニターライク」な音なのだろうか。
聞いた瞬間「いいな」とは感じるが、「惹きつける音」ではない。
作りは最高
分厚いアルミパネルの中央には削り出しの大きなボリュームがあり、その他のツマミ類も全て無垢で質感が素晴らしい。
最近のアンプには全くない感覚だ。
ラウドネスの切り替えは4段階、トーンコントロールのつまみは1つが前後に別れていて左右別々に調節できるなどフラッグシップらしい色々な機能がある。
入力切替もよく考えられていて、パネル右上のレバーを上にするとTUNER、中央でPHONO、下にするとAUX1に切り替わる。
中央のPHONOの位置で左隣の丸いつまみで、PHONO1、PHONO2、AUX2を切り替えることができる、ソースを瞬時に切り替えることができる。
慣れると使い易く、よく考えられたロジックだと思う。
MUTINGスイッチは、三段切替で下にすると「−30db」、中央が「−15db」になっていて、上にすると「0db(MUTING無し)」になる独特の方式。
通常は中央位置が「0db(MUTING無し)」なるはずだが、その位置は「−15db」になっている。
最大出力が120Wもあり通常はMUTING状態で使うので、この配置が実用上はBESTだとおもう。
ヤマハのアンプは、MUTINGレバーを下げた状態が「−20db」で通常はこの位置で使うことがほとんどで見た目が良くない(※ CA-2000などで、A級動作させた場合はこちらの方が良い)。
ボリュームが・・・
ボリュームの「ガリ」予防のためにグルグル回していたら、「カタン」と音がしてボリュームの「クリック」感がなくなってしまった。
本格的な「アッテネーター式」ではなく、通常の方式に「クリック感」を付けていたのだと思う。
少し残念だが、細かな音量調整ができるのでかえって良かったと思ってこれからも大事に使っていこうと思う。