SAECのトーンアーム WE-308SX、念願の、というか自分の物にできるとは思ってもいなかった。
中学生の頃に手の届かない物としてあこがれ続けた思い出が強かったせいか、手に入れようとも思わなかった。
しかし少し余裕ができて、昔の「夢」だった品物をコツコツと集めていたら、いつのまにかレコードプレーヤーが7台にもなってしまった。
そして、少し前にもう一つの「夢」だったSME 3009S2iimpを買った時に、「もう少し出せばSAECも買えるんじゃないか」、と思ったのがいけなかった。
ヤフオクで何度か競ったが、上がり続ける価格にいつも断念してしまった。
そして見つけたのがこれだった。
純正のスタビライザー、純正のMC用ケーブルがついて「即決価格」が設定されていた。
「誰かが落札するかもしれない」とハラハラしながらウオッチを続け、終了間近についに「ポチッ」としてしまった。
届いた商品は少し傷や汚れはあるものの、とても良い状態だった。
早速、PD-441からPD-131にSME 3009S2impを移し替え、PD-131のDA-307を新しく購入したDP-3000+DK-100に移し替えるというSWAP大会になった。
早速、コルトレーンのBLUE TRAINを聴いてみた。
選んだカートリッジは FR-1Ⅲ、銀線らしい繊細な音がするカートリッジだ。
今まで「線の細いというか、全体にか細い」音がするカートリッジと思っていたが、出てきた音は「一つ一つの音が、はっきりくっきり」したものだった。
よく言われる「情報量の多い」音だ。
今まで、どこかへ消え去っていた音が全て出てきているいる感じがする。
シンバルの音が、今までは「シャァァ~ッン」と聴こえていたものが、
「シィヤゥヮァァアァ~ッンッ」と聴こえる。
複数のシンバルが「共鳴」している音が聞こえるようで、リアル感が半端ない。
冷静に考えれば、そんな音がレコードの溝に刻まれているはずはなく、これはトーンアームが「共振」しているのだろう。
そう思って改めてSAECを見ると、全ての部品が金属の「削り出し」で作られている。
通常はダイキャストやプラスチックの形成品で作られるようなところも全て金属の削り出しになっている。
そして他のアームでは少なからず使用されている「ゴム部品」が見当たらない。
「グニャグニャ」で有名なDA-307は特殊な例(これは突き抜けているので、ある意味凄い)としても、SMEでもメインウエイトはゴムで支えられている。
このWE-308SXの後継機種では、自慢の「ナイフエッジ」を衝撃から守るためにゴムでくるんでいるそうだが、WE-308はそんな小細工はしていないらしい。
「数値」で音を決めるデジタルと違って、「耳」で聴いて音を決めるアナログならではの音なのだと思う。
色々と試行錯誤して、耳で聴いてよいと思われる方法や材質を決めていったのだろう。
少し行儀が悪いが、たとえば箸で茶碗をたたいた時に出る音は、
プラスチックの茶碗
↓
金属(ダイキャスト)の茶碗
↓
金属(削り出し)の茶碗
の順番に音が良くなるのと同じだと思う。
アームでここまで音が変わるとは思っていなかった。
しばらくは楽しめそうだ。