ST-930のカートリッジを交換した。
フィディリティリサーチのFR-1 mk3だ。
このメーカーは「トーンアーム FR-64」で有名だが、カートリッジでも評価が高かった(値段も高かった・・・)。
世界で初めてコイルに「銀」を使ったことで注目を集めた。
銀は電動率が高く、音にも独特の「輝き」があるのだが、酸化しやすく、切れやすいためあまり用いられることはなかった。
このカートリッジは数年前にオークションで手に入れた。
SAECのアームを買ったときに、「重さ」がちょうどよかったので最初につけてみた。
その時は「生々しい音」に驚いた。
それはてっきり「アーム」の影響だと思っていたが、今回ST-930につけてみて、「生々しい」のはカートリッジの「音」だとわかった。
以前、ST-930にはEPC-205mk3を付けていた、その音はとても「キレイ」だったのだが、FR-1に変えたとたんに「生々しい」音に変わった。
音が「リアル」に変わった。
実際に「本物の音」をを聞いたことはないのだが、「そこでシンバルが鳴っている」気がするのである。
EPC-205mk3の音の傾向は「CD」に近いもので、細かい音まで「キレイ」に聴かせてくれる。
しかしそれは悪く言えば「なんとなく嘘くさい」音に感じてしまう。
この違いは「特性」を追求するのではなく、実際に「耳」で聴いて「好ましい音」に決めていったためにこうなったのではないかと思う。
EPC-205mk3は大メーカーのTECHNICS(今のパナソニック、当時はナショナル)が、大がかりな測定機器を駆使して開発したのではないかと思う。
それに引き換え、フィディリティーリサーチは社長が技術者で「会社」と言うよりは「研究所」ともいえる性格の会社で、社長の「嗜好」に沿った製品を作っているのだろう。
そもそも「レコード」の音には「どうあるべきか」という基準がない、「デジタル」であれば、「デジタル化する前の測定値と同じにする」という目標がある。
「アナログ」の場合は、「レコードの溝」になった時点で「全くの別物」になってしまう。
それを完全に「復元」するのは不可能なので、人間の耳で聴いて「最も心地よい」ところに持っていくしかないのだろう。
- デジタルの場合は「完全に復元したから、これがベスト」
- アナログの場合は「完全に復元するのは無理なので、私が聞いてみて最も良いと感じたこの辺でいかがでしょうか」
この違いが、「レコードを聴くとホッとする」要因なのではないかと思う。
これだから、どうしてもレコードを聴いてしまう。