オークションでST-930用アームのデッドストックを手に入れた
このプレーヤーのアームは、つい最近までJELCO(市川宝石)から販売されていた息の長い製品だ。
スタティックバランスのジンバルサスペンション、オイルダンプも付いておりとても使いやすいアーム。
オルトフォンのアームの中には、この機種をもとにしたものもあるらしい。
オークションで手に入れたST-930も同じアームが付いていた。
CECでオーバーホールしてもらった時に、調整してもらった物なので問題なかったのだが、先のことも考えて思い切って落札した。
ベルトドライブのプレーヤーは、静かさに関してはダイレクトドライブより一枚上手だ。
軸受けをしっかり設計することのできるベルとドライブは、静粛性に関しては有利なのだろう。
繊細な針の下で、レコードとターンテーブルは挟んだ数センチ下に振動や電気ノイズを発生する巨大なコイルや電子部品、大きな電源回路まであるダイレクトドライブは大きな「工場」の真上で「微振動」から「mv(ミリボルト)」単位の電気を発電しているのだから凄い技術だと思う。
オーディオ全盛期のころ(1970年代)は、ターンテーブルに重要なのは「トルク」であり、ターンテーブルは巨大になり、ついには恐竜のように滅びた。
そして、当時から生き残ったのはイギリスの「LINN LP-12」だけだ。
このプレーヤーが40年前に発売された時は12万円程度だったが、現在フルオプションで数百万円になる。
発売当時は日本の「恐竜」が全盛期で、ターンテーブルをさわると「ブルブル」揺れるのを皆で笑っていた。
その当時も一部の評論家は評価していたが誰も耳を貸さなかった。
けっきょく「恐竜」は絶滅し、「ブルブル」揺れるLINNが生き残った。
ST-930はそんな「恐竜」たちが滅び始めた時代に生まれた。
「飽きっぽい」大メーカーがターンテーブルの開発をやめ、CDへの移行を始めたころだった。
CD並みの「静粛性」を目指して、モーター部分を分離した2重構造のキャビネット、電源と電子回路部分は別筐体になっていた。
結構な「意欲作」だったのだが、当時はオーディオ評論家が「神様」だった時代で、その「神様」の一人が「作りが悪い」と酷評したのが致命的で人気はいまいちだった。
確かに当時の大メーカーは「売れ筋」商品だったオーディオにかなりのコストをかけており、作りこみは凄かった。
部品はアルミダイキャストや削り出しで、「文字」もプリントやシールではなく彫り込まれていた。
しかし、現在の目でST-930を見るとその他の「コストダウン」が激しいので、平均点以上の「仕上がり」だと思う。
このプレーヤーの音はCD並みの分解能だが。
カートリッジの特性と相まって、細かな音まで粒立って聞こえてくる。
このプレーヤーの発売された頃は既にCDが全盛期だった。
そんなこともあって、こんな音造りになったのだろう。
カートリッジをDL-103にすればもう少しアナログっぽさが出るかもしれない。
本当はSPUをつけてみたい。
実は、既に絶版となった重量級ウエイトを手に入れてある…