SANSUI AU-α707
SANSUI AU-α707は1986年に発売されたアンプ
このアンプは手持ちのアンプの中で唯一、新品で購入してそのまま持ち続けているアンプ。
このアンプを購入してしばらくしたころ、車内でCDを聞くことが多くなったことで、オーディオ熱が冷めてしまいオーディオ機器を処分してしまった。
残したのはスピーカー(NS-1000M)と、このアンプだけだった。
残しはしたものの、使うことなく20年以上放置していた。
数年前にあるきっかけで、オーディオ熱が再燃した時に引っ張り出したものの、20数年ぶりに通電するのが怖かったので、そのままの状態でサンスイのアンプ修理で有名なアクアにお願いしてオーバーホールしてもらった。
長期間放置していたのにもかかわらず、故障はなく数点の部品を交換しただけで戻ってきた、最近の家電では考えられない。
このアンプがつくられたころは、ほとんどの部品は「日本製」でトランジスタやコンデンサーの品質が良かったのだろう。
「ソニータイマー」
部品を交換した証しとして修理品に添付されていたコンデンサーを見ていると、「中国製」のトランジスタやコンデンサーが大量生産されたころに「ソニータイマー」という言葉が一部でささやかれたのを思い出した。
当時のソニー製品には「Made in SONY」と書かれたシールが目立つ場所に貼られていた。
生産拠点をいち早く中国に移し始めたSONYの製品が、「日本製」ではないと批判されたことに対して、「この製品はSONY製です」と主張したのだ。
確かに当時のSONYのブランド名は高品質の証しで、「日本製」にも勝ると言いたかったのだろう。
当時はまだ、大型家電店が無かったのでSONY製品は基本的にSONYだけを扱う「SONYショップ」でしか買うことができなかった、しかも定価販売がルールだった。
しかし「中国製」になったSONY製品は、不思議なことに「保証期間(1年間)」を過ぎたころに故障するようになった。
当時はあまりニュースにならなかった(※ ネットがないので大企業の都合の悪いことは、マスコミも報道しなかった)のだが、その原因は「中国製のコンデンサー」だったらしい。
それが分かったのは、同じく中国製のコンデンサーを大量に使用した「アップルのコンピューター」が次々と故障し、世界的なリコール騒動が起こったからだ。
故障の症状は、高温になった電解コンデンサーが「爆発」してしまうことだった。
原因は中国製の電解コンデンサーに使われている「電解液」が不適切(※ 電気を通す有機液体ということで「どぶの水」が使われたという都市伝説もあった)だったために、高温になると爆発(液漏れ)したらしい。
現在でも、設置すれば基本的に電気を入れっぱなしで高温になり、電解コンデンサーには厳しい環境になるLANのハブ(分配機)のパッケージに高品質の証しとして「日本製コンデンサー使用」と書いてあるので状況は変わっていないのかもしれない。
本当は α907 が欲しかった
話がそれてしまったが、α707は大事に保管していた甲斐があって、外観はほぼ新品の状態だ、パネルは「ピアノブラック」の塗装仕上げなので小傷があってもコンパウンドで磨けばピカピカになる。
ピアノブラックは丁寧に塗装されており、よくあるアクリルパネルを張り付けたものとは違う高級感がある。
本当は、サンスイのプリメインアンプではフラッグシップの「α907」が欲しかったのだが、当時の7万円の価格差は越えることは難しい壁だった。
そこで、「買えない」のではなく「買わない」という理由を見つけるために、自前のレコードをもってオーディオショップに通いα707とα907の比較視聴を繰り返した。
そして、α707の音の方が「元気が良い」、「音が前に出る」という理由で自分を言い聞かせてα707を購入した。
今考えると当時は低音の重要性が理解できていなかったので、「α907」は低音が前に出てくるのを、高音が引っ込んでいると感じたのだと思う。
スッキリとした「薄味」の音
改めて聞く「α707」の音は何だか「薄味」だ。
音に固まり感がなく、音が薄く伸ばされたように味わいが希薄な感じがする。
ベースラインの「音階」はちゃんと聞こえるのだが、音の輪郭だけで中身がスカスカで、「圧」を感じない。
「聞き流す」のには良い音だが、「聞き入る」気にはならない。
他のアンプの音と比較して「アッサリ」しているので、最初はよいがだんだんと物足りなくなってしまう。
このあっさり感は、現在所有している他のアンプの入力セレクターにはない(※ L-570を除く)「CD」のポジションがあることが理由ではないかと思う。
レコードの音は「懐かしい」
レコードが最良の音源だった頃は、「癖」のあるレコードの音が「自然」に聞こえるよう色々と「試聴」を繰り返し試行錯誤して音を作っていたのだと思う。
それに比べて「癖」のない音のCDが主流になると、信号に余計な色付けをせずにスピーカーに送り込むことが目的になり「計測器の数値」が音の基準になったのだろう。
久しぶりにレコードを聴いた人が「レコードは懐かしい音がする」と口にするのは、「昔聞いたレコードの音を覚えていてそれを久しぶりに聞いて懐かしく思う」のではなく、「耳で聴いて調整された音」が「心地よく聞こえた」のではないかと思う。
このアンプの前に聴いていた、「YAMAHA CA-2000」は「α707」よりも10年前に発売されたので、セレクターに「CD」のポジションがない。
CA-2000はレコードが「心地よく聞こえる」ように調整されたのだから、レコードを心地よく聞くことができるのは当然のことなのだろう。